あるがままに人をみて、あるがままに肯定せよ。もし、それが耐えられなくなったらその時は、黙って死ぬがよい。これのみが勇者の道だ。もっとも強い者は、沈黙する。すべての言葉は、畢竟怯懦の表白だ。沈黙のみが人間唯一の徳だ。狼にならえ、狼の死に。かくして汝は運命を克服する。生田春月「狼の死」より、”悩んでとにかく悩んで死んでしまえ”30年前、私が、塞ぎ込んだ時期に恩師から届いた手紙にこう書かれていました。この手紙を初めて見た時は、大きな衝撃を受けました。こんな時に「悩んで死んでしまえ」とは、先生は、一体何を言いたいのか?言葉通りのはずはありません。とりあえず生田春月について調べてみました。すると1930年に瀬戸内海で投身自殺した詩人であることも分かりました。やはり、悩み抜いて死ね。と言いたいのか?深意を解すのに数日掛かりました。大衆の中に身を置くことに安心するな。決して、烏合の衆の中に接する事において良しとするな。そして、悩んでとにかく悩んで死んでしまえ。とは、「常に自分を見つめ直し、謙虚に考え工夫して、自分の人生の軌道をつくれ。」ではないかと解釈しました。数ヶ月後、お目に掛かった時、先生は「おお生きていたか。」とだけ言って、笑っていました。当時、慰めの言葉より、強烈に突き放された事。そして謎解きの様な時間が、私のちっぽけな悩みを流し落としてくれました。先生の奥深い優しさに助けられた大切な思い出です。そんな恩師の旅立ちに接し、大切に仕舞い込んでいたこの手紙を取り出して、何度も読み直しました。